Marksman Deckのレビュー
ルーク・ジャーメイのMarksman Deckについてのレビューです。
ちなみに、知人が運営しているNews: MAGIC MOREの方にも私が書いた「ザ・コード」(アンディ・ナイマン)との比較レビューがあるので、気になる方は是非そちらも参照下さい。
こちらではMAGIC MOREの方では書かれなかったMarksman Deck単体でのレビューをしようと思います。
目次
Marksman Deck
Marksman Deckって何?
イギリスのサイキックパフォーマー(マジシャンともメンタリストとも呼ばれる)、ルーク・ジャーメイが考案したマークトデック。
元ネタはTheodore DeLandが1913年に考案したオートマティックデック(Automatic Deck)と呼ばれるもので、マーク+ストリッパー+システムという、言い方は悪いですが非常に楽ちんなデックです。
テンヨーが出しているマジックトランプもマーク+ストリッパーという、デランドデックの一部の機構が取り入れられているとも考えられます。
そして、Marksman Deck(面倒なので以降カタカナで打ちます…)はオートマティックデックを元にルーク・ジャーメイが自身が使えそうだとおもう情報をマークに組み込んだデックとなっています。
ただし、ストリッパーデックにはなっていません。
ジャーメイはストリッパーデックを自作する人なので、もしかしたら彼自身が使っているデックはテーパー加工がされているかもしれませんが…
トレイラーと解説DVD
マークスマンデックについての実演トレイラーが公開されています。しかも40分強という長さ…
付属のDVDは簡易版の実演と解説しかない上に、その解説だけではトレイラーを再現できない場合がある仕様で、実演をするにはトレイラーの映像をある程度参考にする必要があります。
DVDでの解説は不十分ですが、マークスマンデックの基本構造を踏まえつつトレイラーを見れば大体は再現できるようになっています。
また、ルーク・ジャーメイは自身のTwitterで一時PDFファイルのURLを公開しており、それにトレイラーで行った現象の解説があるのですが、現在そのツイートは消されています(2,018年2月現在 Luke Jermay -Mentalism Storeにて無料で販売されています)
PDFの内容を大まかに書くと、
- ハーフスタック
- スタックを使わないエフェクト
- ファローシャッフル
- 封をされた状態から始めること
- 目隠し
- デックスイッチ
- 被暗示性テスト
- ペンデュラム
これに加えて、トレーラーでやった演技についての簡単な解説がありました。何故目隠しを使うのか、何故途中で被暗示性テストを入れたのか…ちゃんとした理由がありました。これは別の機会にまとめるかもしれません。
マークスマンデックとネモニカ
Marksman Deckはネモニカ・スタックになっており、ネモニカ・スタックを知らない人でも扱えるようにはなっているのですが、ジャーメイは記憶している可能性が非常に高いです。
何故かと言うと、記憶していないと不可能な見せ方が1箇所あったからです(DVDでは記憶していなくても出来る方法が解説されています)
書籍版『ネモニカ』(洋書)及び、『ネモニカ・ミラクルズ』(日本語字幕付きDVD)はどちらもマークスマンデックの解説DVDで紹介があったので、ネモニカを知らない人は是非見ることをオススメします。
マークスマンデック自体の機能については色々な場所で言われているのでここでは省略しますが、基本的にネモニカを知らない人向けに設計されています。知らない人向けに設計はされていますが、知っている人が使うと更に不思議な事が出来るようになっています。
はっきり言ってしまえば、ネモニカを使える人であれば普通のマークトデックがあれば基本的な現象は全て再現できますし、なんなら数字だけを振ったマークトと言うものがあればそっちのほうが使い勝手が良い可能性すらあります。
ただし、マークスマンデックでは3つほどネモニカを使った手順が出来る人でもやるのが難しい現象が楽に起こせるようになっています。ネモニカだけでも不可能ではありませんが、面倒な計算や確認に時間が必要で、演じるのにかなりのストレスを感じるタイプのモノです。それが簡単に出来るというのがマークスマンデック最大の売りなのではないかと考えたくらい画期的な情報がマークされています。
ハンドリング
オープニングとデックスイッチ
解説にデックスイッチについての話がありますが、ジャーメイが実際に使ったデックスイッチの方法は巧妙なものと大胆な物がありますし、片方はちょっとした工作が要ります。
デックスイッチについては『ジャーメイズ・マインド』の第3巻でも彼なりの考えが語られています。(やり方は今回と違う)
また、オープニングの開封についても語られています。フィルムを剥がしてシールを破いてから使うという簡単なものだと思っていたら、ちょっとした工夫が幾つかされており、これまた工作が必要な部分がありました。
ずっと以前から感じていたことですが、マジシャンはわくわくさん的要素がありますね(^ρ^)
このシールをされた状態のデックを使うという話については、『ジャーメイズ・マインド』の第2巻でも熱く語られています。
ジャーメイはルーティンの最初にファローシャッフルを1度やってから現象を起こし始めますが、これをやるためには開封して順番を入れ替えたデックを再び未開封状態に戻すという手間が必要になってきます。
ハーフスタック
スタック感を消すための工夫として、ハーフスタックが推奨されています。
これについても『ネモニカ』や『ボリス・ワイルド Transparency』を見ておくと良いかと思います。後者もDVD中で紹介されていましたし、マーク+スタックという組み合わせを使った手順や、マークトデックを扱う上でどのようにしてマークの存在を感じさせないか、そのための手順なども紹介されているので、今後もマークトデックを使うのであれば読んでおく価値があります。
ハーフスタックを利用することによってメモライズドデックの存在を知っている人でも追えなくなることがあります。
オーバーハンドシャッフルとファローシャッフル
マークスマンデックの解説中にあったことではなく、私の考えですが!
マジックをする人は基本的にオーバーハンドシャッフルを使ったほうが良いのではないかと思っています。これはネモニカを使っていることに起因しているかも知れませんが、スタックやセルフワーキングの様にオートマティックに現象が起こる系をやっているのであれば殆ど必須なのではないでしょうか?
オーバーハンドシャッフルの方が自然なフォールスシャッフルをし易いというのもありますし、ランが出来るというのも強みです。
また、同じくらい必要なのがファローシャッフルです。
ネモニカを組むのに5回ファローシャッフルが要求されますし、マークスマンデックの様なスタックを使うときも最初にファローシャッフルを入れるだけでフェアさがでます。
このフェアさが出るというのが非常に有用で、他の現象を起こすときにも何かとファローは役に立つのですが、どうも周囲では基本技法だとは思われていないようです…
結局マークスマンデックってどうなの?
実際使ってみないと分からないというのが本音です。
マークの隠密性について、ジャーメイは「パーフェクトリーハイディング」と言っていますが、私から言わせれば「丸見え」です。演じる環境で大分左右されそうですし、演者のキャラクターや演出でもかなり変わってくるかと思います。
この隠密性という点を度外視すれば、非常に有用なマークトデックではあります。
週末にちょっと怪しい雰囲気のバーでマジック&催眠術のショーを頼まれているので、そこでマークスマンデックを投入してみようかと思っています(スペックを聞く限りかなり都合が良い環境)。
そこでの手応えによっては感想が大きく変わるかもしれませんね。
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