カードの基礎技法(ジャン編)

カード・マジックを始めてみたけど、技法が多すぎてどれからやって良いか分からないよ!という方向けに、私の超偏った意見を述べてみる回です(^ρ^)

まず、前提としてマジックの技法≠フラリッシュということを念頭に置いて下さい。

フラリッシュは見せるものですが、マジックの技法は隠すものです。フラリッシュは速く綺麗にやるものですが、マジックの技法は速度よりも隠密性を重視します。どんなに速くやったとしても動いたことがわかったのであれば、その動きは隠密性が低いと言えますし、遅くやったとしても動かしたことが相手から見て分からなければ隠密性が高いと言えます。

シークレットムーブは名前の通り「秘密の動作」なので、その動きが秘密裏に行われたかどうかが重要になってきます。

もちろん全く動いて無い様に見えるのが正解なので、正しく行なわれた場合他の人からの評価を得ることは出来ません。評価があるとしたら起きた現象に対してのみです。

以下技法と言った場合は、シークレットムーブについてです。

基礎技法4種

私が思う基礎技法は以下のとおりです。

  • シャッフル(オーバーハンド、リフル、ファロー、フォールス)
  • パーム(スティールとアディションを含む)
  • パス(なんでも良いので動きが小さいもの)
  • フォース(出来ればクラシックフォースなどのサイコロジカル・フォース)

とりあえず、この4つができれば現象としては問題ありませんし、これに加えてメモライズドデックを何でも良いので1つ覚えていれば基礎として十分です。

ティルトとマルティプルリフト(ダブルリフト)に関しては私がほぼ使わないので含めていませんが、マルティプルリフト、特にダブルリフトをやるのであればブレークを取るやり方と取らないやり方両方が出来たほうが良いですし、やるならヒットメソッドかプッシュオフでダブルカードを取れるようにすべきです(ヒットメソッドはラリー・ジェニングスのカード・マジック入門にあります)

凄く個人的な意見ですが、アンビシャス・カードは何度もトップに移動する現象として見せる場合、それはコメディだと思っています。

「奇跡って、起きないから奇跡っていうんですよ」(by美坂栞)

何度も起きる現象は奇跡や不思議さとは縁遠く、一つの何度も起きるだけの現象となるので、一種のコメディとも言えます。或いはマジカル要素があるジャグリングか…

人によってはストーリーと絡めてやる人も居ますが、少し臭過ぎたり、演出過剰になる場合もあったりとキャラによって合う合わないがあります。私は完全に合わないので基本的に何かに見立てたストーリーは加えません(やりたくも出来ませんしね)。

コメディとしてやる、或いはストーリを付けない限り、トップに上がってくるだけの現象は繰り返す度に不思議さは薄れ、そこに感動は無く、単にそういう仕組みの玩具を見ているのと変わりません。そこにマジシャンのドヤ顔が加われば、観客の目には如何に滑稽に映ることでしょう…(言い過ぎ)

ダローくらい突き抜けていれば話はまた別ですが…

話が思いっきりそれましたね…

シャッフルに関して

オーバーハンドシャッフルと、オーバーハンドシャッフルで行なうコントロール(フォールス含む)が出来れば十分です。

スタックデックやメモライズドデックを日常的に使おうと思う人や原理系のカード・マジックをやる人はファローシャッフルが必須になります。

どうもオートマティックやセルフワーキングは日本ではあまり地位が高くないように感じますが、スライハンドマジックを手際よくやるよりも、オートマティック系をちょっと不器用そうにやっている方がよほど不思議だったりします。

マジック歴1〜2年になるとスライハンド至上主義に傾倒しますが、そこから更に年月が経つと原理系に戻って来るので、ファローシャッフルは覚えておいて損はありません。(何故かスライハンド好きに限ってファローシャッフルがまともに出来ないって人が多いような?)

以前に、とある大学の文化祭で奇術愛好会の出し物を覗いた時に、最初に出てきた新入生(初心者)がやったマジックがおぼつかない手付きながらも不思議で客受けもよく、後に出てきた先輩格の力押しでやるスライハンドは観客が少し引くくらい微妙な空気になったという話をした気がします。

洗練されていないスライハンドは下手くそな原理系の遥か下に位置します。

リフルシャッフルはフォールスも含めて出来たほうが良いのですが、リフルのフォールスは使いどころが意外と限られているように感じるので後回しでも良いかと思っています(スタンドアップでテーブルがない環境が多かったのもあります)

なお、フォールスシャッフルをやる際は、複数種類、少なくとも動きが違って見えるタイプのを組み合わせて使った方が良いです。エリック・ミードも言っていますし、スタックを使う場合の基本と言えます。

「最初にわざわざ混ぜなくても問題ない」と主張する人が(私を含め)居ますが、これはある程度経験を積んでから起きる現象だと思います。

人によっては「カード混ぜないんですか?」と突っ込まれる人がいますし、特に初心者に多い印象があります。恐らく態度の問題なのですが、それは追々身についていくものなのでとりあえずは技法で処理したほうが確実です。

後、手の小さい人はヒンズーシャッフルがやりやすく、オーバーハンドシャッフルは手の大きい人向けみたいなことが言われていますが(どこかの本にもありましたね)、実際は手の小さい女性でもオーバーハンドシャッフルは出来ますし、ヒンズーシャッフルよりやりやすく感じる人もいます。

オーバハンドシャッフルはカードを落とすだけ出来るのに対して、ヒンズーはある程度カードを保持する必要があるからってのが理由になりそうです。

オーバーハンドシャッフルでのコントロールに関してはリチャード・ターナーのザ・チートが良かったです。初心者には全くおすすめできませんが…

パームについて

私はあまり使いません(ぉぃ)

ただ間違いなく基本です。ここぞという時に出来ないと確実に困りますし、慣れていないとカードが見えていなくてもパームしていることが伝わるので、使わずとも練習をしておいた方が良い技法です。保持した際にどの角度まで見えないかは最低限知っておくべきです。

手が小さくてパームが出来ないという人は、オーディナリーパーム(普通の手のひらに当てるように保持するパーム)ではなく、ギャンブラーズパームやテンカイパームをすれば良いかと…オーディナリーパームで小指側に少しはみ出ていたとしても、角度を調整すれば全く見えなりますし、そもそも手を見られなければ多少隙間があろうがはみ出ていようが見えないもんです。

ちなみに、スティールに関しては ふじいあきら氏 のサイド・ワインダーが最高に使い勝手が良いように感じています。

パスの選択

私が知る限りではクラシック・パスが最も技法感が出ないパスです。

技法感を出さないためには、音を出さないこと、スタートとフィニッシュの位置を変えないことが重要です。力まず、動きに違和感が出ない範囲で出来る限り速度を上げるのも重要ですが、速度はそこまで重要ではないと考えています。

パスはいくら速度をあげてもタイミングが適切でなければ見えますし、見えてなかったとしても一瞬身体がビクッと動くと違和感が出てしまいます。

基本的に見えてしまう技法なので、視線或いは意識が外れているタイミングを狙ってやるイメージですね。逆に言うと、見えていないタイミングでやるので実は角度にはかなり強い技法とも言えます。

ハーマン・パスはパスの動き自体は見えにくいのですが、動作自体が大きくて何かやった感が強いですし、見えていないタイミングでやるには動作が長すぎる(速く終わらない)のであまり好みではありません。これは単に私の技量の問題なので、他のパスでも上述された様な動作であるなら何でも良いと思っています。

追記:

虚を突くという意味であれば、ルージング・コントロールがオススメです。スライハンド的には今回の投稿で紹介している4種のどれよりも簡単ですが、成立させるための難易度が人によっては高いと感じるため基礎かと言われると微妙なところです。

なお、これもパスやダブルカットと同じスタック(カードの並び)を壊さないコントロールであるため、パスはパスしようって人はルージング・コントロールのレクチャーを見ることをオススメします。

※ 劣化コピーがめちゃくちゃ多い技法なので、確実に本人のレクチャーを見てください。本を購入すると考案者の実演動画へのリンクがありますし、マジで脳が騙されるような不思議さがあります。

リー・アッシャー(著),富山 達也(翻訳)

なお、"FALSE ANCHORS" というレクチャー内では、ルージング・コントロールに似たコントロールで、同時にフォースまでするという手順を色々とすっ飛ばしたような技法が解説されています。使い所に悩みそうですが、個人的に好みなので言及しました(ぉぃ)

サイコロジカル・フォース

ある意味全ての元凶です(^ρ^)

キャリアの最初期に覚えたのがクラシック・フォースという世代なので、フォースが基礎だと思っています。

クラシック・フォースの信頼度はダブルリフトよりも高く、ダブルリフトよりも遥かに汎用性が高いと来ています(ダブルリフトよりも信頼性が高いことに関しては、実演するまで信じてもらえなかったですね…)

私のスライト力があまり向上しなかったのは初期(17年前)にクラシック・フォースがある程度完成されてしまったのが原因です!

ぶっちゃけ、クラシック・フォースが出来れば他の技法は殆ど要りません。クラシック・フォースを連続で4回するだけで1つのルーティンになるくらいです(ポール・ダニエルズがやっています

クラシック・フォースに限らず、フォース感が少なく信頼度が高いものが1つでもあれば楽さが全く変わってくるので、何かしらのフォースは身につけた方が良いですね。リフルフォース、ドリブルフォースは非マジシャンでも怪しいと思うらしいので、あまりおすすめはできません…

フォースができれば、予言&読心系の現象ほぼ全てに使えます…

まとめ

以上、この4系統の技法が私が基礎だと考えているものです。

私が最近やったカード・マジックについて少しだけ言及すると…

[ 原理系:ギミック:スライハンド:その他 = 4:4:2 ]

くらいの割合になります。

原理系はセルフワーキングとネモニカで、ギミックは自作のマークトとストリッパーデック、残り2割のスライハンド系で使った技法はクラシック・パス、クラシック・フォース、ピークで、原理系でファローをするのでそれを含めたら4つです。

これがカード・マジックの正しいあり方だとは全く言えませんが、これだけでも「気持ち悪い」という感想が出たり、相手が完全に黙り込んでしまう現象が起こせます。

最後に1つ…

基本的な技法を最初に覚えようと思うのは効率が悪いです。

前提を崩すような言い分ですが、アウトプットを前提としない学習は効率が非常に悪いという事実に基づいています。最初にやりたい現象があって、それを達成するために特定の技法が必要であれば、まず最初にそれを覚えたほうが効率は良いです。

殆どありませんが、やりたい現象が既存のものではない場合、そこに必要になってくる技法もまた既存のものではない可能性がありますし、オリジナルと呼べる技法が出来上がる可能性すらあります。

既存技法は結局のところ既存の現象を起こすために作られたものですし、既存の現象をやりたい場合はそこで使われる技法を覚えた方が速いのも間違いありません。


参考に

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