98%の人が同じ答えを出す質問の話

少し前に軽く流行った奴なので比較的多くの人が知っているかと思います。

98%の人が同じ答えを出す質問の話についてです。

知ってる人は既に答えを思い浮かべていると思いますが、知らない人のためにテストの概要を説明すると…

質問

その1.

まずは以下の足し算をできるだけ早く解いて下さい。

  • 15 + 6=?
  • 3 + 56=?
  • 89 + 2=?
  • 12 + 53=?
  • 75 + 26=?
  • 25 + 52=?
  • 63 + 32=?

その2.

上記の計算が終わったら次の問題を解いてから、その下の質問にできるだけ早く答えて下さい。

123 + 5=?

その3.

「色の名前、道具の名前をそれぞれ1つ思い浮かべて下さい」

予想される解答

98%の人はこの質問を行うと、最後に 赤とトンカチ を思い浮かべるそうです。

どうでしたか?

補足:日本語版とオリジナルでは質問が違うのでは?

日本語で紹介されているテストだと、「何色の道具?」みたいな質問になっているようですが、調べてみると色と道具は別々に聞かれています。あと、質問は「色の名前」であって、色を思い浮かべるわけでは無さそうです。

で、この色ではなく「色の名前」ってあたりで、ピンとくるマジシャン&メンタリストは多いんじゃないかと…

何故?

質問を紹介しただけでは面白くないので、もう少し踏み込んだ話をしようと思います。

もし、赤とトンカチを思い浮かべた人は何故かと思うかも知れません。計算問題の中に赤やトンカチを思い浮かべるような要素があったのでは?と考える人もいました。

そもそも最初の質問は必要だったのか

個人的な考えで言えば、そもそも計算問題は必要ありません。

というのも、英語圏では「色の名前」を聞かれた場合「赤」と答える人が最も多いと言われています。考える時間が短いほど「赤」と答えやすく、逆に長くなると「青」と答える人が増えるみたいな話が、Banachekの"Psychological Subtlety"の第1巻で紹介されています。

で、道具についてもアメリカでは一般的に「ハンマー」を連想する人が多いんじゃないかと… 最近私が読んでいた本でも、道具の例え話でハンマーが出てきますし、道具と言えばハンマーというのが一般的だと考えられます。

日本で有名な大学は?と聞いたら恐らく東京大学と答える人が多いと勝手に思っていますが、それと同じことです。

つまり!計算抜きに、単に「色と道具を思い浮かべて下さい」と言っても、「赤」と「トンカチ(ハンマー)」を連想する人が多いわけです。特に米国文化圏では。

文化圏の差

連想するものは文化的背景によって異なるため、この質問を日本人にしても同じ答えが出るとは限りません。これは表情分析と同じで、日本人とアメリカ人では感情に対する表情のイメージが違います。

これについての詳しい話は以下の書籍を参照下さい。

その他小細工

計算

計算問題を先に解かせるのは、そこで認知能力を削り、その後の質問をより脳に負担をかけないで選ばせるためだと考えられます。思考力や時間を奪うための方法として計算をさせるのは、相手に直感的に選んで欲しいときや、催眠誘導を行う時に多々見られる手法です。

また、問題を2つに区切り、最後に桁数の大きい計算をさせることも、この小細工に一役買っています。バリエーションによっては「これで最後です」とか「最後に1問」と、最終問題で少し難しそうなニュアンスを含めている物もあります。

実際には人間の認知能力はこの程度の簡単な計算では普通は落ちず、何かを決める度に意志力が消耗するというのも神話の1つです。正確に言うのであれば、特定の何かをすることによって認知能力や意志力が下がると信じている人は下がります。

(ある実験では、被験者がその問題の難易度を事前に伝えられていた時だけ、難しい問題を行った後に認知能力の低下が確認されています。そして難易度を伝えずランダムに出題した場合には変化がありませんでした)

ちなみに、最後の問題の答えに100を含むことで、ワンハンドレッド という音を組み込み、より赤色を連想しやすくしているという話もあります。これも英語圏の人じゃないと効果がない感じの仕込みになっています。

これにどれほどの効果があるのかは分かりませんが、元々赤色が連想されやすいところに更に重がけをするのはやはりマジックやメンタリズムで使われる暗示の手法(サイコロジカル・フォース)に似ています。

マジョリティー

これまた出題パターンのバリーションですが、最初に「98%の人が同じ答えを出す」ってのもある種の要素になっています。

「98%が同じ」って単語を見た場合どうしても「他の人が何を思い浮かべたか」を考えます。意識していなかったとしても、自動的に連想されます。

そのため、多くの人が答えそうなものをより答えやすくなるわけですが…上述の通りここは文化圏によってかなり違うんじゃないかと…アメリカ人であればハンマーでも日本人では違う可能性が十分にあります。私の場合は赤で、ドライバーかニッパーでした(恐らくミニ四駆をいじっていた経験のせい)。

特に「2%は変人」と書かれていた場合だと、さらに社会的証明やらの要素が絡まり、より一般的な答えを思い浮かべやすくなるとも考えられます。

まとめ

相手の知識や文化的背景を予測して適切な言動を選んでいくのは、サイコロジカル・フォースや催眠誘導では結構大事なことだったりします。また、一般的な傾向を知っておくのはやはりメンタル系をやる上では重要なことです。

繰り返しになりますが、連想は相手の持っている概念により差が大きく出ます。同じ文化圏で育っていれば似た傾向を持ちますが、それも絶対とは言えません。なので、海外のメンタリズムの本で「赤が選ばれやすい」って情報もかなり疑うべきですし、心理テストの結果も受けた人の国籍をよく見て、それが本当に日本人に当てはまるかを考える必要があります。

ブライアン・R・リトル (著), 児島修 (翻訳)

追記:

最近アクセスが急増しているため、乗っかって動画を作りました。

ブログで触れなかった、日本人でも「赤いハンマー」を連想する人がいるのは何故かを軽く説明してます。

ちなみに、この動画はハンマーがより選ばれやすくなる仕掛けをしているので、もしこのテストを知らない人がいたらぜひ紹介してやってみてもらって下さい。

同業者にしか伝わりませんが、非常にメンタリズム的な手法だと思いますね。動画と投稿内でも言及しているように Banachek の "Psyhoclogical Subtleties" 的な話ですし、日本人向けで似たような問題を作ってみるのも面白いかも知れません。

メンタリズムの本質とメンタリストの正体

追記2:

RHテストよりもう少し当たる確率が高いかも知れないやつがこちら。

 

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