イラストレーターから見たオリジナルデック

ごきげんよう。最近TRMからのイラストの仕事が減ってしまったので、依頼が欲しいAliceです。alice@trickormind.comまで是非ご依頼を送ってください。是非。なんでも描きます。

 

さて、今回は少し前から増えているオリジナルデックの話。

デザインや色や構図等々絵を描く身としては気になる点が多く、かなり好きか嫌いかがはっきりしています。

はっきり言うとダサいと思うデックとカッコいいと思うデックがあります。何度かそんな事を人と話す機会があったので、記事にしようということになりました。

いくつか例を挙げて詳しくお話しようと思います。

 

好きではないデック

 

メテオリックデック

まず箱とバックデザインの違いが気になります。単純に何故なのかという疑問があります。長く愛されているバイシクルやビーのバックデザインと箱のデザインは同じです。少なくとも商品として本気で売り出すのであれば、箱のどちらか一面はカードのバックデザインと同じにするのが無難と言えるでしょう。長く愛されているものの共通点を見つけ取り入れることは、とても重要なことです。どうしても変えたければ、1作目で売れ行きを伸ばして2作目からからにするのがマーケティング対策には適切かと。

 

青いメテオリックの場合は、青のトーンを明るくしたのに黒のトーンはなぜいじらなかったのでしょうか。明らかに黒が強すぎます。エースの青のトーンも明るいのにバックの黒のみが強いのが気になります。色味を揃えないのであれば、トーンはそろえるべきです。

これはイラストレーターからではなく観客としての意見ですが、絵札のはずのJQKが絵札ではなくなった事により、単純にマジックで使用されると分かりにくいです。

 

カクテルデック

こちらもデックと箱のデザインが全く違うのが気になります。理由は上記と同じです。

カクテルのイラストのタッチは好きです。

しかし、やはりこれもカクテルと周りのデザインとの統一感のなさが気になります。メインのタッチに繊細な表現を使うのであれば、周りのデザインも統一して繊細でいて尚且つ力強く見せる線などを入れるべきであって、単純に白く太い線を入れるだけではデザインの一貫性が乏しくなります。

そもそも線はいらないと思いますが、入れたいのであればカクテルの絵と同じ細いタッチにするべきです。

 

ルサルカデック

こちらもデックのデザインと箱のデザインの違いが気になります。上でも述べた通りの理由です。

バックデザインが全体的にがごちゃごちゃしすぎています。制作過程では、Rを大きく少し複雑に描くことで中心に目線が集まるようにしたいのかと思っていたのですが、周りの線が多く横にひし形の模様があるので目線が散らばります。

Rの文字と横のひし形にも統一感がありません。繊細な線でRを描いているのに対し、ひし形がカクカクです。丸みを帯びているデザインと決めたらそう統一しないと、稚拙なイメージになります。ひし形はいらないと思いますが、もし入れたいのであれば、線を繊細なものに変更し尚且つ丸みを帯び入抜きの分かるタッチの線にする必要があるということです。

 

ノスノス

コウモリは可愛いです。水色のデックの色も好きです。

しかし、コウモリが手書きのように動きを感じるデザイン性の高い表現に対して、文字がギャル文字のようにころころと丸いのが統一感がなく気になります。スタイリッシュにしたいのか可愛らしくしたいのかが分かりません。文字は無いほうがいい、または減らした方がいいと思いますが、入れるのであれば字体もコウモリと同じく動きを感じるようなものに変えるべきでしょう。色を薄くするのも効果的かもしれません。

 

好きなデック

アルカナデック

デザインが統一されていて良いです。バックは植物の要素が多く、タッチも統一されているので、主張したいテーマが分かりやすいです。

しかしフェイスデザインはちょっとごちゃごちゃしすぎです。タロット風なので仕方がないのかもしれないしテーマに一貫性を感じるという理由で、フェイスデザインは考慮せず好きなデックに入れました。

 

プレイフェア

シンプルなので見やすく、何を見せたいのかが一目瞭然なので目線が動くこともなく、すっきりとしていて良いと思います。

ジョーカーのみ統一感がないのが気になります。バックが手書きであるのに対し、丸い記号を重ねているので悪目立ちしそうですが、どうやらマジック界隈では数字とジョーカーは分けて考えるそうなのでこういうデザインは多いのかも知れません。

 

ダニエルマディスン(キングス・ラウンダーズ)

こちらもシンプルで、2か所にデザインが入っているので、主張したいところがはっきりしていて良いです。一番好きなオリジナルデックでもあります。

キングス、ラウンダーズともにフェイスの赤色が一般的なカードと比べてトーンダウンされています。エンジ色に近いです。マジックの際に見難いなどの弊害はあるかもしれませんが、落ち着いた雰囲気になるのでバックのシンプルさと相成って高級感を感じます。

キングスのエースが剣に切られているようなデザインも雰囲気は違いますがテーマが統一されていることが分かるので良いと思います。統一されているけどぱっと見るデザインには差があるというのは、中々実現するのが難しいとも感じているので感心しました。

 

デザインはテーマを決めてから統一感を意識して作ることが大切です。また今回この記事を書いていて強く感じたのは、好きなデックとそうでないデックの大きな違いはマイナスのデザインかプラスのデザインかに関係しているという事です。

求めるものにもよりますが、本来デザインというのは描き加えていくのではなく線や模様などをできる限り減らして整えていきます。

シンプルに綺麗にしていくというのが一般的です。

「取り去るものがなくなって初めて完璧なデザインと言える」とも言われています。

 

もしオリジナルデックを作る際、特別強いこだわりがない限りは

テーマ決め→統一感を意識してデザイン制作→線や文字、模様を減らしていく

という順番で作っていくと素敵なデックが出来ると思います。

 

(Alice)

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